教育問題、特に教員の労働環境問題に必ず出てくる部活動。
学生時代の思い出として真っ先に出てくる人も多いのではないでしょうか。
私は部活が嫌いです。
中学校在職時には、顧問を任された以上、早朝から深夜まで、練習にもイベントにも同行し、できることを最大限行ってきました。
部活動のよい面も知っています。
それでも、やはり部活の存在は嫌いです。
部活動問題の複雑さを、説明したいと思います。
部活動の問題点
実は教員のボランティア活動
実は、部活動は教育課程に定められた教育活動ではありません。
学校教育の一環である教育課程外の活動とされています。
どういうことかというと、法律上では「やる義務はないけれど、学校教育の一環として取り組んでね」という意味です。
これが部活問題の難しいところです。
学校に当たり前に根付いている部活動は、義務ではないのです。
学校の活動だから監督責任は顧問をしている教員にある。
でも「教育課程の活動」ではないから時間外労働に当たらない。
そんな、教員にとって理不尽な制度になっています。
一般企業でいうと、休日の有志の草野球の練習を日々の勤務時間にしているようなものです。
それって本当に正しいことなのかな、と疑問を持ちます。
それが当たり前の文化になってしまっていることが、部活問題を複雑にさせています。
超過勤務の要因になっている
勤務時間の超過が過労死ラインである月80時間を超える割合が、小学校では約11~13%ほどなのに比べ、中学校では約27~28%、高等学校では約20%が普通である、という現状があります。
勤務時間に関しては様々な問題が絡むので、これだけが要因というわけではありませんが、単純に考えれば教科担任制である中・高の方が日中に空き時間ができて事務作業ができて早く帰れるはずなのに、実態はその逆です。
それも当たり前です。
定時過ぎまで生徒が学校に残って部活動をし、その指導をしなくてはいけないからです。
部活指導をし、下校指導をし、それからやっと放課後の事務作業をし、退勤になります。
朝は朝練習のために30分以上早く出勤します。
生徒だけで活動させる部分や外部指導者に指導を任せる場合もありますが、何か問題が起きれば管理責任を問われます。
完全に放任はできません。
強制になっており、「やらない」という選択肢を選べない場合がある
さきほどからしつこいほど行っていますが、部活は義務ではありません。
でも、今の日本では「教員」=「部活の指導をするもの」と認識されており、「やらない」という選択肢はなかなか選べません。
近年では部活動拒否を示す動きも出てきていますが、やはり現状としては難しいです。
職員室には「部活動をするために教員になった」と公言する人もおり、部活至上主義な人の方が声が大きいことが多いため、本当は部活をしたくなくても、周りとの関係のために渋々受け入れる場合も多いです。
また、強制されているのは生徒も同じで、やりたくなくても部活動への参加が義務付けられている学校も少なくありません。
自校の部活動にない習い事がしたくても部活動が邪魔になったり、部活と塾、学校の課題と多忙を極めて睡眠時間を削っていたりする生徒もいるため、生徒の健康や自主性も心配です。
教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意する ものとする。特に,生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動に ついては,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感, 連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり, 学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。そ の際,学校や地域の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会 教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い,持続可能 な運営体制が整えられるようにするものとする。
中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編 第1章第5の1のウ
今回の改定で初めて部活に関する文言が明記されましたが、生徒の「自主的・自発的な参加」により行われるものであると定められています。
実態と規定に大きな差があるように感じてしまいます。
部活によっては多額の金銭が動く
部活にもよりますが、年間で数百万レベルで動く部活もあります。
それを一教員や保護者会が管理しています。
セキュリティ面を考えると、とても神経をすり減らします。
「職務ではない部活動で、どうしてこんな大金の責任を負わないといけないんだろう……」
在職時、何度も目の前のお金を見て、そんな気持ちになりました。
顧問がその競技の専門とは限らない
経験者がいれば顧問に割り当てることもありますが、まったくやったことのないものをやらされることも少なくありません。
教員は免許取得において、教育活動に関する勉強はしてきますが、部活動指導に関しては勉強していません。
仮に経験したことのある種目であるとしても、優れた選手が優れた指導者になるとは限らないのです。
しかも、選手として優れているとも限りません。
「やったことがある」というだけで他の人よりは指導ができそうだと判断されます。
適切な人員がいなければ、その競技のルールも知らない人が顧問として指導を任されることも普通にあります。
そうすると、必死にルールを覚えるか、外部指導者に一任するかになります。
付け焼き刃の知識で行う指導や、外部に一任する指導が、本当に学校で行う教育として適切なのでしょうか。
問題が複雑化している要因
部活が大好きな教員の声が大きい
「部活動がやりたくて教員になりました」
という教員。一定数います。
正直、
「なる職業間違えていませんか?」
と聞きたい。
でも、どの世代にも存在し、残念ながら部活動に熱心な教師の方が偉いような風潮があります。
そういう人たちが、部活動を外部に委託したり、活動時間を減らすことに反対しています。
生徒指導的側面があるという意見
学校生活の中で、部活動の時間は割合として大きいです。
多くの教科よりも週当たりの活動時間は長いでしょう。
そうすると当然、生徒たちへの影響も大きくなります。
部活動に、生徒指導的側面や自主性の育成、協調性の育成などの効果を見出す意見もあります。
「部活動がなくなったら、生徒の問題行動が増えるのではないか。」
そんな考えを持っている人もいます。
ただ、考えてみてほしいのは、
「新型コロナウイルスによる休校の間、危惧しているようなことになりましたか?」
ということ。
全国の生徒たちが、一斉に問題行動を起こして騒ぎになったでしょうか?
なっていませんよね。
また、部活動の効果としてあげられること。
それは本来、学校の特別活動の時間(学級活動、生徒会活動など)や学校生活全般で取り組むことなのではないでしょうか?
進学に影響する
高校に送る内申書に部活動に関する項目はありません。
あくまで課外活動のひとつですから。
しかし、課外活動の実績として部活動の情報が載ります。
また、大会などの記録は、賞状として記録に残ります。
あくまで他のたくさんある情報の中の一部になるだけですが、それを加点要素とする高校がある以上、保護者は部活を望みますし、結果至上主義の活動になる危険性もあります。
学校の知名度を上げる効果がある
一番効率よく、学校の知名度を上げ、集客効果をもたらすのが部活だと思います。
大会で上位になれば、その地域だけでなく、広い範囲に名前を知られる可能性があります。
そうすると学校長は部活動の成績を気にしますし、結果至上主義の指導になりやすくもなります。
まとめ
近年の動きとして、部活動の在り方も変わってきています。
部活動が生徒がスポーツ・文化に触れる機会になっていることは大いに評価しています。
習い事では高い月謝を払うことになってしまうことを学校でできる。
そういう選択肢があることは生徒にとって有益なことです。
ただ、今のままでは無理があります。
変化の多い現代社会、部活動も変化の時ではないでしょうか。
部活をやる・やらない。
その選択肢が生徒にも教員にも与えられればいいのに、と思います。
そして、部活動をやるならば、教員の善意と責任感に甘えてないで、今以上に現実的な制度としてきちんと定めるべきです。
この記事はあくまで今現在(2020年4月22日)の制度における個人的見解です。
ですが、1人でも多くの人が部活動問題について考えるきっかけになってほしいと思います。
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